PDP-11が起動し最初にディスクから読み出されるコードは、ディスクの先頭に書かれているブートプログラムです。そのソースコードは、/usr/mdec/rpuboot.s です。UNIX V6だと、このプログラムがUNIXカーネルをディスクから読み出して実行するのですが、V7では、/bootを読み込んで実行します。そしてbootがUNIXカーネルを読み込んで実行します。bootのソースコードは、/usr/src/cmd/standaloneにあります。
ブートプログラムはアセンブリ言語で書かれています。コードのメインの部分を見ていきます。
/ now start reading the inodes
/ starting at the root and
/ going through directories
1:
mov $names,r1
mov $2,r0 / ルートディレクトリのinode番号
1:
clr bno
jsr pc,iget
tst (r1) / namesの終端か
beq 1f
2:
jsr pc,rmblk /
br start / rmblkが正常の終了の場合はスキップ
mov $buf,r2 / r2 = buf[]
3:
mov r1,r3 / r3 = names[]
mov r2,r4 / r4 = buf[]
add $16.,r2 / r2 = 次のディレクトリエントリ
tst (r4)+ / inodeは空か
beq 5f
4:
cmpb (r3)+,(r4)+ / ファイル名の比較
bne 5f
cmp r4,r2 /
blo 4b
mov -16.(r2),r0 / r0 = inode番号
add $14.,r1 /
br 1b
5:
cmp r2,$buf+512. /
blo 3b / buf[]の最後でない
br 2b / buf[]の最後
/ read file into core until
/ a mapping error, (no disk address)
1:
clr r1 / r1 = 0
1:
jsr pc,rmblk
br 1f
mov $buf,r2
2:
mov (r2)+,(r1)+
cmp r2,$buf+512.
blo 2b
br 1b
1:
clr r1
6−9行で、ルートディレクトリのinodeを読み込んでいます。igetは、r0で指定した番号のinodeをinode[]にコピーします。
13行は、rmblkでルートディレクトリをbuf[]に読み込みます。15行目からは、1エントリごとにファイル名とnames[]を比較します。
一致した場合は、27行でinode番号をr0に読み込みます。r1に14を足して8行目に飛び、igetでファイル名が一致したファイルのinodeを読み込みます。
11行でファイル名が終わっていることを確認し、38行目からinodeのdi_addr[]に沿ってファイルをメモリーに読み込んでいきます。
次のリストは igetです。
/ get the inode specified in r0
iget:
add $15.,r0
mov r0,r5
ash $-3.,r0 / r0 = (r0 + 15) / 8
bic $!17777,r0 / r0 &= 0x01fff
mov r0,dno
clr r0
jsr pc,rblk
bic $!7,r5 / r5 &= 0x0007
ash $6,r5 / r5 *= 64
add $buf,r5 / r5 += buf
mov $inod,r4
1:
mov (r5)+,(r4)+
cmp r4,$inod+64.
blo 1b
rts pc
3-6行でinode番号をinodeが存在しているブロック番号に変換し、9行でそのブロックをbuf[]に読み込んでいます。
10-12行で目的のinodeのbuf[]内でのオフセットを求め、13ー17行でinode[]にコピーしています。
次のrmblkは、bnoで指定されたブロックを、inode内のdi_addr[]に従ってbuff[]に読み込みます。
/ read a mapped block
/ offset in file is in bno.
/ skip if success, no skip if fail
/ the algorithm only handles a single
/ indirect block. that means that
/ files longer than 10+128 blocks cannot
/ be loaded.
rmblk:
add $2,(sp) / リターンアドレスを2増やす
mov bno,r0
cmp r0,$10.
blt 1f
mov $10.,r0 / 間接参照
1:
mov r0,-(sp) /
asl r0 /
add (sp)+,r0 / r0 = bno * 3
add $addr+1,r0 / r0 += di_addr + 1
movb (r0)+,dno
movb (r0)+,dno+1 / dno = ブロック番号の下位2バイト
movb -3(r0),r0 / ブロック番号の上位1バイト
bne 1f
tst dno
beq 2f
1:
jsr pc,rblk / ブロック読み込み
mov bno,r0
inc bno
sub $10.,r0
blt 1f / 直接参照ならリターン
ash $2,r0 / r0 *= 4
mov buf+2(r0),dno / dno = ディスク番号の下位2バイト
mov buf(r0),r0 / r0 = ディスク番号の上位2バイト
bne rblk
tst dno
bne rblk
2:
sub $2,(sp)
1:
rts pc
ブロック番号が0から9までは直接参照で10は間接参照になりますが、コメントにあるとおり、2重間接参照には対応していません。
13行でブロック番号10以上は、間接参照に対応するため10に固定しています。
15-18行で、ブロック番号からdi_addr[]内でのディスク番号下位2バイトのオフセットを求めています。
22-24行は、ブロック番号が0だった場合、rmblkを呼び出した直後のアドレスにリターンします。
26-30行で、ブロックを読み込んだ後、直接参照の場合はリターンします。
31行目からは間接参照の処理で、29行で10引かれたディスク番号を4倍しオフセットを求め、先に読み込んだブロックからブロック番号を取り出します。
34-36行で、番号が0でなければブロックを読み出します。
ブロックが正常に読み込まれた場合は、9行でリターンアドレスが+2されているので、rmblkを呼び出した次の命令をスキップします。
これで、UNIXが起動する第一段階を追いかけられました。次は、2段階目の/bootになります。