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2023年11月22日水曜日

UNIX V7 カーネル 

 ブートはどうにかなってきたので、そろそろカーネル本体に手を出していきたいのですが、どこから手を付けていいのか、正直途方に暮れています。

カーネルのコードは /usr/sys/ 以下にあり、/usr/sys/conf/ で make すれば、カーネルがビルドできるようです。その中の makefile を見る限るでは、l.s, mch.s, c.c あたりから見ていけば良さそうです。


この辺りは、カーネルのか解説本を見てもあまり参考になりません。解説本には、メモリ管理やプロセス管理のコードの説明がされていますが、移植を前提とした解説ではないので。この辺りは、PDP-11のハードに依存したコードが多いのも難しいところです。

暫くこの辺りのコードを眺めながら、突破口を探すことにします。

2023年7月29日土曜日

Z8001MBex その1

新しくZ8001CPUボードを作製しました。今までは、ラッピングワイヤを直接はんだ付けして配線していましたが、今回初めて、ユニバーサル基板にピンヘッダをたてワイヤラッピングで配線してみました。この方法は、ピンヘッダとICソケットとの間を配線するのが単調で根気がいります。とくにPLCCソケットは苦痛でした。ラッピングでの配線はやっていて楽しいのですが、間違いに気づいたときは修正が大変です。ほどきたい配線の上にすでに配線されていると、それもほどかないといけません。一度ほどくとワイヤが傷んでしまっているので、2回目巻きなおすと折れたりするので気を使います。年で眼も弱ってきているので、そろそろPCBが作れるようにならないとだめですね。


今回のボードは、MMUを搭載しCP/M-8000以外のOSも移植することを考えています。初代のボードでは、Z8010 MMUを使ってメモリー管理ができるように考えていたのですが、何故かうまく動作せず。結局、CPLDでセグメントアドレスを変換するロジックを組んで、CP/M-8000が動作するようにしました。しかし、この方法ではアドレス変換が固定で融通が利かず、CP/M-8000以外のOSを動かすのは難しくなります。

新しいボードでは、Z8010を使うことは諦めて、MMUを自前で組むことにしました。これに先立って、Z8002 CPUを使ったボードで、MMUを自作できそうか簡単な回路を組んで試してあったのですが、実際に作ってみると配線量の多さからかなり苦戦しました。MMU以外は、最初のボードとほぼ同じです。

自作MMUの仕様は下のようになっています。

  • 高速SRAMを使ってページテーブルを構成する
  • ページテーブルをメモリ空間に置く
  • ページサイズ 2Kバイト
  • 論理アドレス空間 1Mバイト(16セグメント)
  • 物理アドレス空間 1Mバイト
  • 命令とデータ空間を分離可能
  • システムとノーマルで空間を分離可能
手持ちで256kビットの高速SRAMを持っていたので、これを使ってページテーブルを構成しました。試験的に作ったZ8002ボードでは、I/O空間にページテーブルを置いたのですが、Z8001ではメモリ空間に置くことにしました。ページテーブルはSRAMの一部しか使わないので、未使用の部分が通常のメモリとして使えます。
また、メモリ空間だとブロック転送命令が使えるので、ページテーブルのコピーや移動が短いコードで行なえます。

ページサイズとアドレス空間のサイズは適当に決めたもので、これが最適なのかはわかりません。欲張ると配線量が増えるので、自作するには、これ位がちょうど良いかなと思っています。

命令とデータ空間の分離は、CP/M-8000を動かすためには必要な機能です。また、Z8001には8086のように8ビット命令がないため、コードが大きくなりがちです。64kバイトのセグメントサイズに縛られるZ8000では、データを別空間に置ける機能はあったほうが良さそうです。

システムとノーマルで空間を分離する機能は、UNIXのようなOSを移植するために付けておきました。一応、CP/M-8000でも使われているようなのですが、役には立っていないようです。

今回は次のような機能は見送っています。
  • ページを無効に設定できる
  • ページを書き込み禁止に設定できる
  • ページにアクセスがあったか記録する
最初の2つは、あとからでも実装できると思います。しかし、ページアクセスの記録は、別のメモリを積むか、高速SRAMにアドレス変換後に書き込む回路を追加する必要があり、実現が難しいので諦めています。

すでに、CP/M-8000の移植は完了しています。初代のボードとほとんど同じなので、MMUの初期化を追加し、初代のボードと同じセグメントアドレス変換になるよう合わせれば動きました。

そして今、UNIX V7を移植しようと挑んでます。

2023年7月9日日曜日

UNIX V7のブート 4

PDP-11が起動し最初にディスクから読み出されるコードは、ディスクの先頭に書かれているブートプログラムです。そのソースコードは、/usr/mdec/rpuboot.s です。UNIX V6だと、このプログラムがUNIXカーネルをディスクから読み出して実行するのですが、V7では、/bootを読み込んで実行します。そしてbootがUNIXカーネルを読み込んで実行します。bootのソースコードは、/usr/src/cmd/standaloneにあります。

ブートプログラムはアセンブリ言語で書かれています。コードのメインの部分を見ていきます。

/ now start reading the inodes
/ starting at the root and
/ going through directories
1:
	mov	$names,r1
	mov	$2,r0			/ ルートディレクトリのinode番号
1:
	clr	bno
	jsr	pc,iget			
	tst	(r1)			/ namesの終端か
	beq	1f
2:
	jsr	pc,rmblk		/ 
		br start		/ rmblkが正常の終了の場合はスキップ
	mov	$buf,r2			/ r2 = buf[]
3:
	mov	r1,r3			/ r3 = names[]
	mov	r2,r4			/ r4 = buf[]
	add	$16.,r2			/ r2 = 次のディレクトリエントリ
	tst	(r4)+			/ inodeは空か
	beq	5f
4:
	cmpb	(r3)+,(r4)+	/ ファイル名の比較
	bne	5f
	cmp	r4,r2			/ 
	blo	4b
	mov	-16.(r2),r0		/ r0 = inode番号
	add	$14.,r1			/ 
	br	1b
5:
	cmp	r2,$buf+512.	/ 
	blo	3b				/ buf[]の最後でない
	br	2b				/ buf[]の最後

/ read file into core until
/ a mapping error, (no disk address)
1:
	clr	r1				/ r1 = 0
1:
	jsr	pc,rmblk
		br 1f
	mov	$buf,r2
2:
	mov	(r2)+,(r1)+
	cmp	r2,$buf+512.
	blo	2b
	br	1b
1:
	clr	r1

6−9行で、ルートディレクトリのinodeを読み込んでいます。igetは、r0で指定した番号のinodeをinode[]にコピーします。

13行は、rmblkでルートディレクトリをbuf[]に読み込みます。15行目からは、1エントリごとにファイル名とnames[]を比較します。

一致した場合は、27行でinode番号をr0に読み込みます。r1に14を足して8行目に飛び、igetでファイル名が一致したファイルのinodeを読み込みます。

11行でファイル名が終わっていることを確認し、38行目からinodeのdi_addr[]に沿ってファイルをメモリーに読み込んでいきます。


次のリストは igetです。

/ get the inode specified in r0
iget:
	add	$15.,r0
	mov	r0,r5
	ash	$-3.,r0			/ r0 = (r0 + 15) / 8
	bic	$!17777,r0		/ r0 &= 0x01fff
	mov	r0,dno
	clr	r0
	jsr	pc,rblk
	bic	$!7,r5			/ r5 &= 0x0007
	ash	$6,r5			/ r5 *= 64
	add	$buf,r5			/ r5 += buf
	mov	$inod,r4
1:
	mov	(r5)+,(r4)+
	cmp	r4,$inod+64.
	blo	1b
	rts	pc

3-6行でinode番号をinodeが存在しているブロック番号に変換し、9行でそのブロックをbuf[]に読み込んでいます。

10-12行で目的のinodeのbuf[]内でのオフセットを求め、13ー17行でinode[]にコピーしています。


次のrmblkは、bnoで指定されたブロックを、inode内のdi_addr[]に従ってbuff[]に読み込みます。

/ read a mapped block
/ offset in file is in bno.
/ skip if success, no skip if fail
/ the algorithm only handles a single
/ indirect block. that means that
/ files longer than 10+128 blocks cannot
/ be loaded.
rmblk:
	add	$2,(sp)			/ リターンアドレスを2増やす
	mov	bno,r0
	cmp	r0,$10.
	blt	1f
	mov	$10.,r0			/ 間接参照
1:
	mov	r0,-(sp)		/ 
	asl	r0				/ 
	add	(sp)+,r0		/ r0 = bno * 3 
	add	$addr+1,r0		/ r0 += di_addr + 1
	movb	(r0)+,dno	
	movb	(r0)+,dno+1	/ dno = ブロック番号の下位2バイト
	movb	-3(r0),r0	/ ブロック番号の上位1バイト
	bne	1f
	tst	dno
	beq	2f
1:
	jsr	pc,rblk			/ ブロック読み込み
	mov	bno,r0
	inc	bno
	sub	$10.,r0
	blt	1f				/ 直接参照ならリターン
	ash	$2,r0			/ r0 *= 4
	mov	buf+2(r0),dno	/ dno = ディスク番号の下位2バイト
	mov	buf(r0),r0		/ r0 = ディスク番号の上位2バイト
	bne	rblk
	tst	dno
	bne	rblk
2:
	sub	$2,(sp)
1:
	rts	pc

ブロック番号が0から9までは直接参照で10は間接参照になりますが、コメントにあるとおり、2重間接参照には対応していません。

13行でブロック番号10以上は、間接参照に対応するため10に固定しています。

15-18行で、ブロック番号からdi_addr[]内でのディスク番号下位2バイトのオフセットを求めています。

22-24行は、ブロック番号が0だった場合、rmblkを呼び出した直後のアドレスにリターンします。

26-30行で、ブロックを読み込んだ後、直接参照の場合はリターンします。

31行目からは間接参照の処理で、29行で10引かれたディスク番号を4倍しオフセットを求め、先に読み込んだブロックからブロック番号を取り出します。

34-36行で、番号が0でなければブロックを読み出します。

ブロックが正常に読み込まれた場合は、9行でリターンアドレスが+2されているので、rmblkを呼び出した次の命令をスキップします。


これで、UNIXが起動する第一段階を追いかけられました。次は、2段階目の/bootになります。

2023年7月2日日曜日

UNIX V7のブート 3

ディレクトリは、/usr/sys/h/dir.hで定義されているdirect構造体のリストです。


#ifndef	DIRSIZ
#define	DIRSIZ	14
#endif
struct	direct
{
	ino_t	d_ino;
	char	d_name[DIRSIZ];
};

direct構造体のサイズは16バイトで,、最初の2バイトはinode番号です。続く14バイトがファイル名です。


ルートディレクトリのファイルを見てみると、rl2tunixだとinode番号は0x007dだとわかります。i-node番号からディスクイメージでのアドレスへの変換は、次の式になります。

 (inode番号 - 1)×dinod構造体のサイズ (64バイト)+ inodeブロックの先頭アドレス(0x400)

計算すると、rl2tunixのi-nodeのアドレスは0x2300になります。


di_addr[0]~di_addr[9]は直接参照で、ブロック番号0x000da5, 0x000da8, .... , 0x000dc0となっています。di_addr[10]は間接参照で、ブロック番号0x0dc3にブロック番号のリストがあります。こちらは3バイトではなく、4バイト単位でブロック番号が書き込まれています。

92ブロックの間接参照のブロック番号が書かれています。直接参照と合わせると、102ブロックに渡ってrl2unixが書き込まれていることがわかります。

これでUNIXカーネルのファイルまでたどり着くことができました。次は、ブートプログラムを見ていきます。



2023年6月29日木曜日

UNIX V7のブート 2

inodeブロックを見ていきます。inodeブロックは、ディスクイメージでは0x0400から始まっています。
inodeの構造は、/usr/sys/h/ino.h の dinode構造体で定義されています。この構造体のサイズは64バイトです。
 struct dinode
{
	unsigned short	di_mode;/* mode and type of file */
	short	di_nlink;    	/* number of links to file */
	short	di_uid;      	/* owner's user id */
	short	di_gid;      	/* owner's group id */
	off_t	di_size;     	/* number of bytes in file */
	char  	di_addr[40];	/* disk block addresses */
	time_t	di_atime;   	/* time last accessed */
	time_t	di_mtime;   	/* time last modified */
	time_t	di_ctime;   	/* time created */
};
#define	INOPB	8	/* 8 inodes per block */
/*
 * the 40 address bytes:
 *	39 used; 13 addresses
 *	of 3 bytes each.
 */
};
inode番号0は未使用で、ルートディレクトリのinode番号は2なので、ルートのinodeの位置は、ディスクイメージでは0x0440からです。


ルートディレクトリのファイルの位置は、0x044cからのdi_addr[]にブロック番号がリストされています。このアドレスは、下のコメントのように3バイトで表され、上位1バイト+下位2バイトで記録されています。最初の3バイトは0x0002d4で1ブロック512バイトなので、0x5a800からファイルのデータが保存されています。
アスキーダンプにunixの文字列が見られます。SIMHでルートを ls してみた結果が下で、対応していることがわかります。

2023年6月25日日曜日

UNIX V7のブート 1


ブートローダの移植から始めようとしているわけですが、ディスクドライブからカーネルを読み込まないといけないので、まずはファイルシステムを理解する必要があります。この辺りは参考になりそうな書籍やネット上の情報があるので助かります。

技術評論社から出ている「はじめてのOSコードリーディング」は、UNIX V6の説明ですが、基本はV7とほぼ同じなので参考になります。

コードだけを読んで理解するのは難しいので、ディスクイメージと照らし合わせながら理解していきます。SIMHのサイトからUNIX V7のSoftware Kitesをダウンロードし、ZIPファイルに含まれているunix_v7_rl.dskを使います。

http://simh.trailing-edge.com/kits/uv7swre.zip 

このディスクイメージのブロックサイズは512バイトです。

先頭のブロックはブートブロックで、システム起動時に最初に読み込まれるブートプログラムが格納されています。ディスクからカーネルを読み出すコードですが、とりあえずは手をつけずに置いておきます。

ブートブロックに続く1ブロック、ディスクイメージのダンプリストで0x0200から0x03FFまでがスーパーブロックになります。



スーパーブロックの構造の定義は、/usr/sys/h/filsys.h にある filsys 構造体です。NICFREEなどの定数は param.h に定義されてます。

 /*
 * Structure of the super-block
 */
struct	filsys {
	unsigned short s_isize;	/* size in blocks of i-list */
	daddr_t	s_fsize;   	/* size in blocks of entire volume */
	short  	s_nfree;   	/* number of addresses in s_free */
	daddr_t	s_free[NICFREE];/* free block list */
	short  	s_ninode;  	/* number of i-nodes in s_inode */
	ino_t  	s_inode[NICINOD];/* free i-node list */
	char   	s_flock;   	/* lock during free list manipulation */
	char   	s_ilock;   	/* lock during i-list manipulation */
	char   	s_fmod;    	/* super block modified flag */
	char   	s_ronly;   	/* mounted read-only flag */
	time_t 	s_time;    	/* last super block update */
	/* remainder not maintained by this version of the system */
	daddr_t	s_tfree;   	/* total free blocks*/
	ino_t  	s_tinode;  	/* total free inodes */
	short  	s_m;       	/* interleave factor */
	short  	s_n;       	/* " " */
	char   	s_fname[6];	/* file system name */
	char   	s_fpack[6];	/* file system pack name */
};
これらデータは、ブートには直接関係ないのですが、ファイルシステムの構造が含まれています。
0x0200 : s_isize(2バイト)は、inodeブロックのブロック数です。PDP-11はリトル(ミドル)エンディアンなので、0x02D2で722ブロックになります。

0x0202: s_fsize(4バイト)は、ディスクドライブのブロック数です。上位の2バイト、下位の2バイトの順に並んでいます。0x00004650なので18000ブロックです。

スーパーブロックの次のブロックは、inodeブロックでinodeのリストです。このディスクイメージでは、722ブロック続きます。

2023年6月24日土曜日

UNIX V7の移植に挑む

PCCをZ8000に対応できそうな目処がたってきたので、UNIXの移植に手をつけていきます。何年越しのプロジェクトやねん、って感じですが、PCCの作業にすこし飽きてきたのと、実際のコードをコンパイルしながらデバッグしていった方が現実的な気がしてきたきたからです。途中で挫折しそうな気がしますが、気長にやっていきます。なにせ趣味(暇つぶし)ですから。

まず第一歩として、githubの unix-history-repo からV7のソースコードをクローンしました。

$ git clone git@github.com:dspinellis/unix-history-repo.git -b Research-V7-Snapshot-Development --depth 1 
ざっと眺めてみて正直どこから手を付ければ良いのか、ちょっと悩みます。少しでも成果が見えて、進んでいる実感がないと継続は難しいですからね。やはり、ブートローダあたりからかなあ。

2022年8月11日木曜日

ZCCの注意点

YouTube に ZCCで "Hello, world" する動画を上げました。

"Hello, world" under CP/M-8000

 ZCCを使ってみて気づいた注意点を上げておきます。なにせK&R時代の古いCコンパイラなので、今の感覚でコードを書くと、思わぬところでエラーの嵐に遭遇します。

・=- に注意

 「x=-1」 は、「x = -1」ではなく「x -= 1」に解釈されます。コンパイル時にwarningがでますが、オブジェクトファイルが出力されリンクも正常にできるので注意が必要です。実行してみて意図した動作をしないことで気づきましたが、理由がわからずしばらく悩みました。 かなり古い(K&R以前?)の書き方のようです。

・関数のプロトタイプ宣言に引数の型を含めない & 戻り値がなくても int で宣言

 これもかなりハマりました。次のように宣言します。

         int foo(a, b);

         foo(a, b) int a, b;
         {
            /* 戻り値なしの処理 */
         }

・unsigned char が使えない?

 unsigned int は使えるのですが、unsigned char はサポートしていないようです。

・関数名、ラベル名、変数名は8文字まで 

 Cコンパイラは名前の前に "_" をつけるので、実質使えるのは7文字です。それ以上の文字は無視されるので、気を付けないと違う名前を付けたのに同じと判別されてしまいます。アセンブラとリンカが8文字までしかとらない仕様なので、これは仕方ありません。

・コンパイラの -D オプションが働かない

 これは、The Unofficial CP/M Web Siteに書かれていました。試したところ本当に働きません。ヘッダファイルに、#define で定義しておく必要があります。

・コンパイラのオプションがわからない

 ZCCのドキュメントが失われているようで、コンパイラーに指定できるオプションがわかりません。今のところわかっているのは、上の働かない-Dぐらいです。CP/M-68KのCコンパイラにはドキュメントが残っているようなので、参考になるかもしれません。

・改行コードと終端コードに注意

 改行コードがCR+LFで、テキストがEOFで終端されていないとエラーに悩まされます。これはZCCというよりCP/Mの仕様なのですが、意味のわからないエラーメッセージがでるので悩まされます。CP/M上でコードを編集する場合は大丈夫ですが、LinuxやWindows上で編集している場合に問題になります。改行コードは指定しておけば問題ないのですが、末尾にEOFをいれてくれるエディターはないようなので、意図的に入れる必要があります。VimだとCtrl+Zで入れられます。EOFのあとにテキストが入っていても無視されます。

癖がわかってくると、ZCCは結構使える気がします。アセンブリ言語で書くよりは格段に楽ですから、多少の制約は我慢できます。

2022年8月1日月曜日

CP/M-8000にFPUエミュレーションを追加

 CP/Mのライセンスに変化があったのと、夏休みに入って時間ができたこともあり、CP/M-8000に手を入れています。その一番目として、やり残していたFPUエミュレーションをCP/Mにリンクして使えるようにしました。

作業としては、fpe.o と fpedep.o をXOUTからCOFFに変換し、biostrap.sを書き換えるだけですんだので拍子抜けするほど簡単でした。fpe.oはZilogが出荷予定だった実数演算コプロセッサのZ8070をエミュレートするもので、Z8070の命令がくると例外処理で実数演算をソフトウェアで実行します。

これで、ZCC(ZilogのCコンパイラ)で、floatが扱えるようになりました。ためしに、レトロCPU界隈ではメジャーなマンデルブロ集合のASCIIARTをC言語に書き換えて実行してみました。コードは下のような感じです。


これをコンパイルして実行したのが下の結果です。

見慣れたアスキーアートが出ているので、問題なく動作しているようです。ただし実行時間は遅く、7分44秒とかなり期待はずれな結果です。結果はともかく、実数演算がC言語で使えるようになっただけで可能性は広がります。試せる人はかなり限られると思いますが、この成果はGitHubのリポジトリに反映しました。

今後は、開発環境を改善していく予定です。私にはCP/M標準のEDが全く馴染まないので、まずはエディタをどうにかしようと検討中です。

2021年12月27日月曜日

Z8K CP/Mボード その2

こんなものを試す人はかなりのハッカー基質の人だと思い、Githubの説明はあまり親切でないのと、英語があまりにひどいので、CP/M-8000を起動させるための補足をしておきます。

準備

作業はDebian系のディストリビューションで行うことを想定しています。ATMEGAのコードをビルドし書き込むために、gcc-avr, avr-libc, avrdude をインストールしておきます。Z8000のコードをアセンブルするために、GNUのサイトからbinutils をダウンロードして、 Z8001クロス開発環境 binutilsをビルドしてみるを参考にビルドしてください。私が確認しているは使っているのは、binutils-2.34 です。

ATMEGA164のヒューズビット設定 

Z8001MBと同じくZ8K CP/Mでは、Z8001を起動するためにATMEGA164Pが使われていますが、JTAGの禁止と外部クロック入力にするためヒューズビットの書き換えが必要です。値は、LFUSE : 0xE0, HFUSE : 0xD9 です。ATmega164PのJTAGを禁止するを参照し、avrdudeを使って書き換えてください。

マシンモニタの書き込み

z8kboot ディレクトリでmakeを実行してください。z8kbooter.elf が作られます。 チップへの書き込みは、make write で実行できます。

CP/M-8000のビルド

COFFに変換済みのcpmsys.o と libcpm.a が入れてあるので、cpm8kディレクトリで、makeするだけです。cpm8k.bin が作られます。

CP/M-8000のディスクイメージの作成

cpmtoolsをインストールし、/etc/cpmtools/diskdefsにcpm8kディレクトリにあるdiskdefsを追加します。diska/b/c/d ディレクトリにディスクイメージに含めたいファイルを入れて、make dskimg を実行します。disk.img   ができるので、dd でCFに書き込めばOKのはずです。ディスクイメージに入れるCP/M-8000のコマンド類は、 http://www.cpm.z80.de/download/cpm8k11.zip を解凍すると得られるDISKn.ZIPに含まれています。

こんな状況になると予想しておらず、慌てて書いたので間違っているかもしれません。

2021年12月26日日曜日

Z8K CP/Mボード

 私がGithubにあげているZ8001MBの回路図をもとに、tomi9さんがCP/M-8000を動作させることができるPCBを作成され、一枚送ってくださいました。


PCBだけでなくCFのソケットとGALも同封されており、あとは手持ちの部品だけで行ける状態でした。tomi9さん、ありがとうございます。自分もいつかはPCBを作ってみたいとは思っているのですが、なかなか勇気が出ません。ラッピングワイヤーでの手配線だと、すぐに回路の修正がききますが、PCBだとそう簡単にはできません。

久しぶり(中学高の技術の授業以来?)のPCBでの組み立てで、ちょっと一投目は緊張しましたが、最難関のCFソケットのはんだ付けを済ませ、Z8536以外の部品を組みつけて、現在、動かせるところまで来ています。

2020年5月16日土曜日

CP/M-8000公開

Z8001ボードにインストラクションとデータのメモリ空間を分離する機能の追加と、CP/M-8000のBIOSの対応を行いました。これで、アセンブラやCコンパイラなど、すべてのコマンドが使えるようになっています。


回路図とBIOSのコードをGitHUbに上げました。

https://github.com/4sun5bu/Z8001MB

今後、CP/M-8000を移植したい人が現れるかはわかりませんが、役に立つと思います。

2020年4月29日水曜日

CP/M-8000の移植とその先へ

暫くCP/M-8000のBIOSを書いていたのですが、ほぼ終わりました。
現在、CFに書き込んだCP/Mのディスクイメージから起動できるようになっています。コマンドも実行可能で、下はSTATを実行した例です。


CP/Mのことをほとんど知らないのに移植に挑んだのが原因ですが、Disk I/Oの部分を書くのにかなり手間取りました。いかに役に立ったサイトのリンクを載せておきます。
  • John Elliott氏のCP/M Main Page : CP/M全般の情報が集められています。ファイルシステムの構造やBIOSの情報が役に立ちました。
  • Grant Searle氏のGrant's homebuilt electronics : CP/MのドライブをCFに対応させるアイデアや、ディスクフォーマットの決め方を参考にさせてもらいました。その他の情報も盛りだくさんです。
  • neko Javaさん?のCP/Mコーナー : CP/Mのディスクイメージの作成方法の情報があります。

ここまでで「CP/M-8000の移植はできた」と言っていいとは思うのですが、実は問題があります。トランジェントコマンドの多くが、インストラクションとデータのメモリ空間が分けられるハードウェアを要求することです。
Z8001は8MBのアドレス空間を持ってはいますが、64kBのセグメントに分割されています。コマンドはノンセグメンテッドのコードで書かれているため、利用できるメモリー空間が64kBに制限されてしまいます。それを補うためインストラクションとデータとを別々の空間に置き、128kBまで扱えるようにしているのです。

今回作ったCPUボードでは空間の分離には対応していないので、殆どのコマンドが実行できません。EDやASすら実行できなので、テキストを入力してアセンブルすることすらできず正直何もできません。

動かないコマンドがあることは、移植を開始した早い段階で気づいていましたが、「移植できるのか」という技術的なことにしか興味がなかったので目をつむっていました。せっかくここまで来たので、ハードウェアを改造してインストラクションとデータ空間を分けられるようにしていきます。

2020年4月19日日曜日

CP/M-8000 目覚める

ここ暫くCP/M-8000のBIOSの実装を続けてきたのですが、やっとプロンプトが表示されるところまで来ました。まだプロンプトの表示が変で、謎の"1#"が表示されてはいますが、ビルトインコマンドをタイプすると実行できることを確認できました。
完全にBIOSが実装できておらず、特にディスクI/Oがまだ未実装なので何もできませんが、ゴールデンウィークを中に実装を進めるつもりです。


The Unofficial CP/M Web site には、「CP/M-8000を移植するには、CP/Mが動作するOlibetti-M20上でビルドすることを検討しろ」と書かれていたのですが、オブジェクトファイルをCOFFに変換するツールができたことで、LinuxやWindows上でクロス開発できるようになりました。LinuxやWindows上では高機能な開発環境が使えるので、作業がかなり楽になります。
このあと、私以外にCP/M-8000を移植しようとする人が現れるのかはわかりませんが、ものずきな人のために情報をまとめて公開していくつもりです。